東日本大震災のボランティアで思った葬儀本来の意義

協榮式典 坂本 秀樹さん(写真左)
協榮式典 小林 裕一さん(写真右)volunteer

所沢市の老舗葬祭業、株式会社協榮式典で、葬祭ディレクターを務める。2011年3月の東日本大震災での、遺体の搬送のボランティアに参加した。多数の身元確認が困難な遺体、ドライアイス不足、さらに地域の主要火葬場が被災し、交通網やライフラインの断絶、燃料不足などにより火葬が追いつかない、一部は土葬もやむを得ないという状況だった。充分な葬儀を出してあげられない、遺族の無念さが心に刺さった。

葬祭業に携わる身として改めてこう思った。葬儀とは、遺体を処理し葬る、故人を宗教的儀式などを通して「あの世」へと旅立たせる、亡くなった事を社会に告知する等の目的がある。しかし、一番大切な事は「大切な人を亡くしたことを受容する」ということ、つまり死を受け止め、悲しみを整理し、気持ちの区切りをつけ、心の平穏を得るということ。大震災時の、あまりにも突然に大切な人を亡くした遺族の方々が、心の平安を取戻す日は来るのだろうかと心配せずにはいられなかった。遺族の心に寄り添い、満足ができるお見送りができるよう、改めて心に誓った。
葬儀は、「縁」だと思う。お隣さんをはじめ、血の繋がりは無くとも、たくさんの人と一緒にこの地で生きて、この地を支えてきた。地の縁、人の縁がこれからも繋がっていけるように、地元、地域に密着した葬祭業であり続けたいと思う。

(熟年ばんざいVOL66より転載)